「ほめない」「叱らない」アドラー的子育て
働く母として“親子”で自立し成長するためには……?【後編】

ラシク・インタビューvol.105

株式会社子育て支援 代表取締役 熊野 英一さん

前回記事、『「ほめない」「叱らない」がいいって本当?編集長・宮﨑が実践中の“アドラー的子育て”とは?』に引き続き、熊野英一さんのインタビューです。

親自身のあり方を見つめ直すことをメインテーマに、自分が親として良かれと思ってしている言動が子どもの自立にマイナスの影響を与えている事に気づかされました。後半は働く母として、特に気をつければならない要素について伺ってきました。

無意味な「罪悪感」は捨てて。質を高める建設的な努力を

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「ほめない」「叱らない」がいいって本当? 編集長・宮﨑が実践中の“アドラー的子育て”とは?【前編】

熊野 英一さん(以下、敬称略。熊野):もしお母さんが働いていることで子育てにおいてマイナスに作用していることがあるとしたらそれは “罪悪感” だと思います。子育てにおいて大切なのは、時間の長さではなく圧倒的に『質』。質を高めることに対して、もっと建設的な努力をすればいいのに、その努力はせず、ただ自分が働いているから子どもと接する時間が短い、ということに対して罪悪感を感じ、一方では言い訳にも使っている。「もし長い間触れていればこんなことにはならないはず」と。質を高める=愛する・共感するということなのですが、まずは子どものことをジャッジしないで聞いてあげる。「すぐ良し悪しで判断する」「効率的にアドバイスする」こんなことばかりしていると「お母さんは全然わかってくれてないな」って子どもは思いますよ。これでもわかってくれないなら、わざと感情的に反抗的な態度をとって…もうこうなればチキンレースですよ、親がどこまで認めてくれるか。最終的には「学校行きたくない」と言い出して、そこでやっと「どうしたの?」となる。子どもはやっと「振り向いてくれた」と思うわけ。ここまでくれば相当勇気をくじかれていますよ。

宮﨑編集長(以下、敬称略。宮﨑):もしちょっと子どもがわざとしているな、とか癇癪起こしているな、と思ったら「これはサインだ!」と思っていいわけですね。

熊野:そう。僕は子どもを例えるとき「巨大なスポンジを抱えている」とイメージしてもらいます。とにかくすぐ乾くので、すぐカサカサに乾燥するのです。でもそのスポンジに「ほめ」に値するときだけ「すごいねー!お利口さんだね!」と、その時だけバシャッと水をあげても意味がないのです。ほめられる時だけドバッじゃなくて、いつもちょっとずつ。「見ているよ! あなたのことはいつも注目しているからね」ポタポタポタ…… と常にスポンジに水を垂らしてあげる、ぐらいが調度良いのです。

編集部:なるほど! それならどんな忙しくてもできますね。

熊野:忙しければお手紙を書くでもいい、ラインするでもいい。毎日、ちょっとずつ、ちょっとずつ。だから忙しさを理由にはできないのです。自分が満たされて、自尊感情が持てて、勇気が出てくるから、誰かに言われなくてもできるようになる。親が怒るから・ほめるから、ではなくて自分のために動くようになります。でも自分の心がカサカサのままだと、どう言われても無理だよね。

共感するけど同意せず、配慮はするが遠慮せず

宮﨑:仕事中「いかに効率よくジャッジするか」これをずっと考えているので、子どもと接する時は、きっちりモードの切り替えが大変です。それが現代正義とさえ思える部分でもありますから

熊野:みなさんそうだと思います。そこを切り分けるってすごく大事なこと。でも、仕事でも人と人との関係性があったら「ウォームハート」と「クールヘッド」を両方持っていないと結果って出ませんよね。だから子どもに対しても一緒なのです。まずは共感。共感するけど同意せずと言うことも必要。
編集部:共感するけど、同意せず……?

熊野:親としてやってほしくないことってあるじゃないですか。例えば、ゲームしたいから宿題はしない、って言い出した時「楽しいことだけやりたいのね」って気持ちには共感するけど、「そのまま宿題をしないって選択自体には親として同意できない」と。共感=同意ではないってこと。

これって仕事でも同じことが言えます。自分の意見を言ってはいけないと思っている人は、そのうち共感疲れして爆発しちゃう。でも「相手に共感する、でも自分は違う意見を持っている」これが主張できると大人ですよね。最初から共感しないって人もいるけれど、それだとただ主張が強いってことで孤立しちゃう。

「嫌われる勇気」ってまさにこういうことで、配慮はするけど遠慮はせずに、こういうことを頭の中で整理する必要がある。すると、仕事やパートナーとのストレスが大抵減るのです。自分の意見を大切にし、他者の異なる価値観も共感して受け入れる。こここまでできると、ほぼハッピーになれますよ。

 

子育て=自分育て。前向きな姿勢を見せていればいい

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熊野:子育てって、まさに自分を育てる良い機会。自分の成長をリアルタイムに見せていればいいと思います。見本として「お父さんも迷うことある。でもこうやって自分のことも他の人のことも大切にして、信頼関係を築いて、迷いながらも前進しているよ」と。いつもその姿を家庭でも見せていたら、子どもは必ずマネしていく。お父さんもお母さんも凹んだことがあっても、例え夫婦で喧嘩しても「ああやって仲直りしていくんだ」とかね。親が幸せに向かって健全な努力をしていると、子どもは勝手にマネしますよ。

宮﨑:深いですね。

熊野:自分を育てることで、子どもがマネをする。子育てって子どもに何かをするってことじゃなくて、まずは自分をなんとかしていれば、それでいいってこと。

編集部:子どもに対してやってあげたい! ということは悪循環になってしまうのに。自分のためを考えた方が良いってことですね。

熊野:実はお母さんが一番ふわふわの気持ちになっていられることが一番良いと思います。でもそこにはまた「罪悪感」があって、自分の喜びとか楽しみとか後回し!みたいな自己犠牲感がお母さんってあるじゃないですか。そうなるといつもキリキリしてギスギスして、旦那も子どもも誰もハッピーじゃない。逆なのですよ。お母さんこそ、一番ハッピーでわくわくすることをしていて「お母さん超ハッピー!だからおすそ分けするわよ!」っていうぐらいが丁度いい。

宮﨑:父親で「罪悪感」抱く人ってあまり聞きませんが、母親は抱きがちですよね。お母さんが働いたり、自分のために楽しんだりしたらいけない…… と。

熊野:そんなこと本当にどうでもいい。自分が好きだったらそれをすればいい。そしてハッピーな状態を作って、そのハッピーを家族に分けたらいい。無償の愛だって、源泉を絞ったまま愛だけ出せってのは無理な話でしょう。

編集部:自分を大事にするってこと、あまり考えていませんでした。

熊野:これすごく大切で、子育てで悩んでいるお母さんを見ていると、過度な罪悪感を抱いている人が多い。その罪悪感を持って人を裁くから、だらしなく寝転がっている旦那が許せないとか、子どもがグズグズして許せないとか…。ダラダラしっぱなしはダメだけど、リラックスしたい時だってあるじゃない。まずはお母さんがリラックスしたら?って。

心配しすぎる、でも子どもの将来なんて誰もわからない!

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編集部:うちの次男3歳は家ではとてもお調子者なのですが、外ではすごくシャイで。幼稚園の運動会の時、一切の演目を拒否したのです。誰になんて言われようがやらない。きっと、今は見られるのが恥ずかしい時期なのだな、と見守りました。このまま待つしかないのでしょうか……

熊野:結論からすれば、絶対に時が解決します。あまり心配しなくて大丈夫だし、このままずっとモジモジしているってことはないし、上手に自意識の調整ができるようになる。親が心配すればするほど、長引かせるだけ。

編集部:長い目で見ることが大切なのですが、なかなかできないんですよね。今の現象を見て、何か反応しなきゃって思ってしまう。

熊野:その子なりに一生懸命発達している、良い途中経過なのです。子どもの成長って必ずフェーズがあって。今は家の中がめちゃくちゃ居心地いい。でも家の外はいろんな目が見ている、そこにまだ自分の気持ちの調整ができていない。外でも自分らしくていいってことがわかれば、もう大丈夫。だから自分らしくていいんだよ、と伝え続ける。親以外の友達とか先生とかとの関わりでも変わってくるし、心配の種というよりは「良いこと」なんだと思いますよ。

編集部:受け取り方次第ですね。本当に。

熊野:そう。どうにでも取れちゃうから。子どもの将来なんて本当わからないし、それを作り上げるのは本人だから。親の影響力はすごくあるけど、それならプラスの影響を与えたい。足を引っ張るのだけはやめよう。という自覚さえあれば、勝手にその子らしく、なるようになりますよ。

編集部:そうですね!

熊野:心配すんなってことですよ!

宮﨑:親は心配しすぎなんですよね。比べたくないと思いつつ、比べている自分もいるし。

熊野:そんな不完全な自分もいいじゃない。それすら認めたっていい。完璧はありえないから。

編集部:子どもをおく環境って親が選ぶじゃないですが。これって親のエゴですか?

熊野:そうです。親の価値観で選んでいるだけで、それがその子にとって良いかどうかはわかりませんよ。
東京の中ではいい環境かもしれませんが、ちょっと世界に出たらいかに自分の考えや価値観が小さいかがわかります。だから何だっていいんです。そうでもいいし、そうでなくてもいい。子どもはいろんな環境の中で育ちますから、環境が人格形成にどう影響するかわからない。

編集部:その中でいかに自分らしい道を、自分で見つけていけるか。それをサポートするのが親の役目なのですね。でもどうしても環境に目がいってしまう。

熊野:その子の人生に与える周囲の環境って限定的だと思う。その子がその子らしく、自分の人生の脚本をどう書き、どう演じるかというのは、その子本人決めるんだということ。親が希望していた環境を用意したところで、その子自身が自分らしく過ごせなかったら意味もないし、親が望んでいるところでなくても、すごくいい友達や先生に出会えたり、人生を左右するようなきっかけに出会えたりするかもしれない。そんなことって神のみぞ知ることでしょう。自分がコントロールできないことや、大した影響のないところで親の気持ちを振り乱していたら、本当に時間の無駄。それよりも忙しいんでしょ? もっと大事なことを見ようよって。そっちの方がずっとロジカルですよ。

編集部:そうですね。結局、終始悩み相談になってしまいましたが(苦笑) 今日はありがとうございました!

子どもは巨大なスポンジ=とてもわかりやすい例えでしたね。「あなたのことを見ているよ!」とお水を常にあげるには、まず親である自分もハッピーでないとあげられない、と言うところも共感できました。自分が作り出す罪悪感にとらわれて、家族に対してギスギスしてしまうなんて本末転倒。子どもたちにプラスの影響力を与えるためにも、まずは無意味な罪悪感を取っ払うことが先決だと思いました。子育て=親育て。子どもに何かしてあげる、その前に自分が成長していく姿を見せていけばいい、と言うのも本当に目から鱗でした。

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熊野 英一さんプロフィール
アドラー心理学に基づく「相互尊敬・相互信頼」のコミュニケーションを伝える〈親と上司の勇気づけ〉のプロフェッショナル。全国での多数の講演や「日経DUAL」「朝日おとうさん新聞」などでのコラム執筆を通して活発な情報発信も行う。約60の保育施設立ち上げ・運営、ベビーシッター事業に従事。2007年、株式会社子育て支援を創業、代表取締役に就任。2012年、日本初の本格的ペアレンティング・サロン「bon voyage 有栖川」をオープン。日本アドラー心理学会 正会員。
HP:株式会社 子育て支援

ワーママを、楽しく。LAXIC

文・インタビュー:インタビュー(宮﨑晴美)・文(飯田りえ)

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