「周りから見たらただの変人」。
中原美智子さんがふたごじてんしゃを通して、伝えたい世界観

ラシク・インタビューvol.73

ふたごじてんしゃ 中原 美智子さん

世界初、後輪が2つある3輪タイプの双子用自転車の企画・開発に携わり、販売を目指す、株式会社「ふたごじてんしゃ」の中原美智子さんは、実際に双子の兄弟を育てるお母さん。
双子を乗せるのには市販されている2輪の自転車では無理だと気づき、安全に移動できる手段として3輪の自転車を手に入れようと思いつきます。

企画・開発などの仕事を経験していたわけではなく、「ふたごじてんしゃに勝機があるだなんて思っていない、ただ自分が欲しいだけなんです」という切なる思いが現在の取り組みの原点だと中原さんは語ります。

ただ双子用の自転車を作って売ってメンテナンスして、だけではないその先にあるビジョンや世界観、そして実現するためにどうやってパートナーの協力を得るか?というワーママたちへのヒントまで、中原さんにたっぷりと語ってもらいました。

第2、3子を高齢出産で授かり、「双子用の自転車が絶対に必要!」と感じたことがきっかけ

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編集部:双子用の自転車が欲しいけど既製品が存在しない、となると「出かけられない」と引っ込んでしまいそうなところを、「じゃあ作ってやろう」と中原さんを動かしたモチベーションというのは何だったんでしょうか。

中原美智子さん(以下、敬称略 中原):うちは双子の上に長男がいるんですけど、一緒に自転車で公園に行って、四季折々の自然の移り変わりやその中の生態系を見て…… ということが大好きだったんです。
寒くても、雨が降っても、その時にしか得られないものがあって、後々に想い出になる。
だから次にできた子供にも同じことをしようと誓ったんだけど、7年後に双子を授かって、一人目のときは余裕だと思っていたことが何にもできないことに気づきました。

2人分の世話をしているとまず寝られないし、生きていてくれたらという最低限レベルの子育てをしていると、忙しすぎて可愛いってこともよく分からない。

長男のときは半年過ぎくらいからベビーカーに乗せて朝と午後にお散歩に行っていたのに双子になるとできなくて、「過去の自分はやっていたのに」という自分自身の経験やルールに苦しめられたんです。

双子用のベビーカーも使ったんだけど、あれって全部乗せたら30キロくらいになるんですよ。
他の人たちが自転車で楽々行けるところを、30キロあるベビーカーを押していくと何倍も時間をかけなきゃいけないからたどり着けないんです。
ただ、良かったのは高齢出産だったから「疲れる」ってことに気づけたんですよね。
若いときだったら、バイタリティで乗り越えていたかもしれないところを、高齢出産で体力がない分、工夫をしようと、自分が重ねてきた年月に蓄積されているものが活かせた。
だったら私は双子を乗せられる自転車を手に入れなきゃと思ったことがきっかけです。

ただ自転車を売るのではなくて、「使い手がものを支える」という循環を見届けたい

編集部:そこから何年もかけて企画をしてきて、これから販売ができるかも、という段階とのことですが、中原さんは決して自転車を売る商売がしたいわけではないんですよね。

中原:一般的な家族構成で作られた商品では出かけられない人、双子のお子さんだけじゃなく、障害のあるお子さんがいる家庭なんかも考えると、みんなそれぞれの家庭内で、お母さんの自助努力で何とかしてきたんですよ。
これだけ「あったらいいな」と思っても、世の中には存在しなかったわけですし。

そう思うと、「私がふたごじてんしゃに乗れたらそれでいい」ではなくて、活動してきた中で、皆さんが困っていた状況を整理して、そしてシェアできるまでにしなくてはいけないなって思っています。
また、ふたごじてんしゃができて、必要とする人が乗れるようになればハッピー! ではないんですよね。
いま、問題になっている歩道を暴走する自転車などは、歩行者にとって脅威でしかありません。私たちが自転車に乗れるようになり便利なればOKなのではなく、同じ道を共有する歩行者にとっても幸せであってほしい。
ふたごじてんしゃは3輪自転車です。低速で走ることと手押しすることを得意とします。歩行者の間をすり抜けるんじゃなく、相手を思いやりながら安全に使ってほしいんです。
自ずと作り手であるメーカーも守ることもできる。
商品の製造責任という問題だけじゃなくて、モノって使い手が作り手を支えてこそだとおもうから、そこに良い循環が生まれることを願いその為に働きたいと思っています。

ふたごじてんしゃに乗っている「絵」が見えたから、たどり着くルートがあると信じられた

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編集部:自転車が欲しい! と思ってから決して順風満帆とはいかなかったようですが、夢を諦めようとか挫折しそうになったことはなかったんでしょうか。

中原:日々挫折の連続ですよ。でも自転車が欲しい! と思った時から、私には乗っている「絵」が見えていたんです。
双子を後ろに乗せて、風を受けて、何だったら匂いまで想像できた。
行く先々でそんなの作れないって言われるけど、「絵」が見えているんだったら、そこにたどり着くルートはあるはずなんだって必ず信じてました。

ただね、男性って体力も脚力も女性よりあるから、夫なんかは「俺は双子を2輪の自転車でも送れるから困ってないよ」っていう態度だったんですよ。
「君が頑張っているから応援するけど、何を応援したらいいのかよくわからない」って当初は言われていました。

編集部:自転車に限らず、困っていることに対する夫婦の温度差ってありますよね。

中原:保育園に持っていくおむつに1枚1枚名前書くのが大変だってピンとこない男性も多いでしょう?
だけど、双子ももう年長で重くなってるから、夫も最近、2輪の自転車でお迎えするのが不安になったんですって。
子供も「あんなグラグラするものに乗せないでほしい」って抗議するもんですからようやく今頃になって夫も「2輪じゃダメだな」って理解してくれてますけどね。

自分とパートナーは違う山の峰を歩いている。でもどこかで落ち合うことができればOK

編集部:子育てと仕事、そして家事を両立するのに悪戦苦闘する中で、旦那さんの協力や理解を得られずに不満を抱えている女性も多いですよね。
そんな女性たちに中原さんからメッセージはありますか?

中原:私も日々不満は夫に言ってるし、皆さんも困っていることはきちんと伝えないといけないと思います。
ただ危機に直面したときは、相手に求めるよりも、「あの人となら家庭を築いてやっていける、だから結婚しよう」と信じた自分の気持ちを思い出していましたね。
「あの人がどうだった、何をしてくれた」じゃなくて、自分はどうやって判断してきたかってことが大事だから。
日々、怒ったり伝えることは相手に向けて、だけど、最終的に引き受けるのは自分だってことを忘れたらいけないと思いますね。

だけど、パートナーと価値観が違うっていうのは、相手は向こうの山の峰を歩いていて、自分はこっちの峰を歩いているってことだから「ここで落ち合うんだろうな」ってところもありますよね。
違うからこそ、自分のピンチのときに違う視点で道を進めてくれたりするっていうことも大きいんです。
だから今は理解を得られないとしても、最終的な目標である「家族の幸せ」に向けて整えていければいいんじゃないかなとも思いますよ。

「自転車が欲しい!」と声を上げていた時から、周囲にはただの変人だと思われていた、と語る中原さん。
しかし、その想いが、ふたごじてんしゃに乗る自分の「絵」に結びついているのだと感じさせてくれる、信念を持っている方でした。
「続けるためには、面倒くさいってことをスルーしないことが大事。絶対向き合って調べてつぶさないと、後々足をすくわれることになる」という言葉に身が引き締まる思いでした。

中原 美智子さんプロフィール
大阪市在住、男児3人の母。現在45歳。
32歳で長男、39歳で双子を出産。単胎育児と多胎育児の大きな壁にとまどいました。
何かと諦めることが多い多胎育児。
双子でも自分らしい子育てがしたい。自由にお出掛けができるようになりたい。子どもたちにいろんなものを見せてあげたい。
そんな自身の想いから「ふたごじてんしゃ」は歩みはじめました。
現在は、ふたごじてんしゃを必要としてくれる人に届け、たくさんの人を笑顔にできるよう活動しています。
HP:ふたごじてんしゃ

ワーママを、楽しく。LAXIC

文・インタビュー:文・インタビュー:真貝 友香

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