『お父さんがキモい理由を説明するね』の作者に聞く
思春期のわが子とのコミュニケーション術

ラシク・インタビューvol.72

freee株式会社 経営ハッカー編集長 中山 順司さん

「お父さんがキモい理由を説明するね」この衝撃的なタイトルの本をご存知でしょうか。幼少期はとても仲が良かった娘も中学生になり、会話も減ってきて、挙げ句の果てには「キモい」と言われるまでに。その娘との失われた会話を取り戻すべく、著書の中山順司さんはサシで語り合う『父と娘のマジトーク』を3ヶ月にわたって敢行。その様子をネットコラムで連載したところ、「お父さんがキモい理由を説明するね」の記事が2日で100万PVを突破!その後、連載をまとめた書籍が出版され、反響も大きく重版に。そこで今回中山さんに、親になれば誰もが悩むであろう『思春期のわが子との向き合い方』についてお話を伺いました。

幼少期は娘の好きなことに”とことん付き合う”サポート役

小さな頃から中山さんのキスにのけぞる娘さん

LAXIC編集部:マジトークを行う以前の様子を少し伺いたいのですが、幼少期の娘さんとはどんな関係性だったのでしょうか。(編集部注:「お父さんがキモい理由を説明するね」の連載はこちら

中山順司さん(以下、敬称略):小さい頃は素直で従順な子だったので、小4ぐらいまで育児で困ったことはありませんでした。小5ぐらいになって、娘が私と少し距離を置くようになり「お父さん、ちょっと……(キモい)」となるように。

編集部:奥さまとの間で接し方の役割分担のようなものは。

中山:嫁は小言をよく言っていたので、私はその逆で叱らない、大声は出さない。嫁が怒っているな…… と思ったらあとでやさしくフォローする、とかですね。取り決めをした訳でもなく何となく。

編集部:小さい頃から、父娘だけの時間って結構ありましたか?

中山:『娘と料理を一緒に作る』ことを、共同作業・遊びの一環としてやっていました。土日の午後どちらかを使って、おかず一品作るとか、ですね。3年生から続けていて、今でも気が向いた時はやりますよ。

また、絵と工作が好きな子だったので一緒に物作りをしたり、人混みよりアウトドアが好きな子なのでアスレチックや森に出かけたり。彼女の興味から逆算して、私が調べて趣味をサポートしていました。

編集部:(奥さん交えての)家族ではなく二人で?

中山:そうですね。昔から二人のシーンはよくありましたよ。中学生になってガクッと減りましたが。

編集部:そういった関係性や話せる環境があったから、サシで話し合うことが成立したのでしょうか。

中山:それはよく言われます。娘もなんでも素直に聞く性格だったので。「試してみる?」と聞くと「よくわからないけどやってみよう」と。そのポジティブさには助けられました。

編集部:周りのお父さん達の反応は?

中山:わが家もやりました! という報告は未だありませんが、悩んでいる話はよく聞きますね。「中山さんの娘さんがいい子だったんじゃない?」「うちはもっとひどいから」って。

編集部:みんな「いいなぁ」と思いつつも、それぞれの家庭では実行できていないのでしょうか。

中山:大ごとにしちゃうと子供は察知しますから、「いかに誘わずにして誘いだすか」でしょうね。女子的には父と二人きりが嫌みたいです。となると、お母さんがいる事で話せるかもしれませんね。そこから徐々にステップアップしていったらいいのかもしれません。

マジトーク後も「キモいものはキモい」!でも信頼関係はUP

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編集部:最後の方、ものすごく深い内容を話されていましたよね。「いじめ」「生きる意味」について話したり。「未来に貢献したい。未来の人のための役に立つよう、今を頑張りたい」という娘さんの答えが素晴らしすぎて…… ビックリしました。

中山:私も「えっ」ってびっくりし、ちょっとだけ泣きそうになりました。書籍とか雑誌からの抜粋? と思いながら、そうではないと。

編集部:今は高校1年生になられたそうで。(連載をしていた)中1の頃からその後の変化はありました?

中山:僕はドラマのような “激変“ を期待していたのですが、それは起きず。『気持ち悪いものは、気持ち悪い』と、生理的なものは変わらないみたいです(苦笑) デレデレしたり、タッチしたりすると嫌がるので、もうやめました。

編集部:でも、パパへの信頼感は増した?

中山:やっただけの事はありますよ。実は…… なんと先週、娘から「もう1度(マジトークを)再開したい」と言ってきまして。日常の細かな悩みは嫁にしていますが「大きな悩み事、人生の岐路についてはお父さんと話がしたい」と。
どうやら高2から特進コースに進むので今までと環境も変わるし、勉強も厳しくなる、バイトも行けない…… どうやって高2を過ごそうか、という話を今週の日曜日、朝一コメダで。

編集部:またコメダで(笑) 再開、楽しみですね。

中山:毎週やるよ、と言うわけでなく久々にやりたいと。でも信頼が続いている再確認ができて、単純に嬉しいですね。

会話は引き出す、常識は言わない、説教はしない。目から鱗の”マイルール”

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編集部:「家族の定例行事を作っておくと思春期になった時に良い」といった話を聞きますが、そういったものは中山さんの家庭にもあるのでしょうか。

中山:子どもが遊びたい場所に無条件について行く、子どもが見たい映画について行く、ぐらいでしょうか。たとえ「つまらないな……」って思っても、「ネガティブコメントは言わない」がマイルールです。オッサンと女子の趣味が合うはずもないですから。

編集部:これ面白いよ、みたいな自分の好きなものを勧めることは?

中山:それは押し付けになっちゃうからしません。いつも引き出しています。押し付けてもダメですよ。

編集部:それは女子だから? 中山さんのスタンス的に?

中山:男の子だったら意気投合したかもしれませんが、女兄弟もいませんでしたし。“北風と太陽”みたいに、無理強いしないで向こうの興味を引き出そう、ということを人一倍意識していたと思います。

編集部:なるほど。「お父さんが名言集を渡してくれた」とか、ジョブズのスタンフォード大での有名なスピーチ「コネクティング・ザ・ドッツ」を見せる場面もありましたが。

中山:親が言うより有名な人の言葉のほうが説得力があるじゃないですか。でも中学生が自力であのコンテンツにはなかなか辿り着けないので、情報の橋渡しをしてあげようと。彼女の悩みの“解”に近いものを、書籍・映画・TED…… などの力を借りるような感じ。「これが解だ」と決めつけると、「いや、違うし」となるので、結論は出さずに「こう言う考え方もあるみたいだよ。見て見たら?」と。

編集部:そうですね。今は仲良いけどいつか会話がなくなるのでは? とドキドキしている親御さん大勢いると思うのですけが、ぜひアドバイスを。

中山:相手の興味って絶対ありますよね。そこを突破口にすることでしょうか。親が興味ある・なしは関係なく、まず興味を示して話題にする。こっちが言いたいことを言うために会話するのではなく、向こうが楽しんでくれる会話ってなんだろうか…… と考える。男はすぐに「結論はなんだ?」みたいになりますが、そのプロセスを怠ると「お父さんには話さない」とヘソを曲げます。

編集部:昭和のお父さんの真逆ですね。

中山:命令で従わせることはできますけど、それって上辺だけですよね。家の中だけでお利口…… みたいな面従腹背は嫌だったので。僕からしたら娘の言いなりになっているようで、僕がちゃんとコントロールしている、手に乗せられているようで、いかに手に乗せるか。

あと話す割合でしょうか。8:2ぐらいで、娘に話させています。相手の発言に被せて『説教したくなる欲求』って、親なら誰しもあると思うのですが、そこはガマンです。

編集部:すごい! 8:2を保たせるのって難しいですよね。

中山:意識的に飲み込まないと「俺の若い頃は……」って話になるので、そこはグッとこらえて、自分を律します。

編集部:そのスキルは仕事でも人間関係全てに応用できますね。

中山:コミュニケーションって「言ってオシマイ」ではなく、「相手に伝わる」のがキモです。相手が本当に思っていることを言ってくれないと「真」のことではないので。相手を気持ちよくさせる、と言うと恣意的ですけど、快適な方な感情をキープさせる。「会話をリードする」のと「意識的に常識は言わない」ようにしましたね。

まずは相手の予想を超えるようにする。常識って言わなくてもわかっていますよね。勉強しないといけない理由、とか…… それはわかりきっていることなので、逆に「勉強ってしないといけないのか?」、「高学歴=将来が約束されているってことなのか?」と尋ねてみるんです。そうすると、「あれ? お父さん、何言ってるの?」となる。

編集部:そのほうが話してみたくなりますよね。変化球とか新しい返しがあると思うと、お父さんとも話してみたくなります。さすがです!

夫婦の会話レスにも活かせる「エクストリーム対話ゲーム」

編集部:夫婦での会話のルールはあるんでしょうか。

中山:よく口喧嘩はするんですよ。嫁は短気でマシンガン。それに対して僕が応戦する。そうすると互いに疲弊して、ハッピーでなくなります(笑)

決めていることが2つあって、ひとつは「身内の悪口を言わない」。嫁姑問題の愚痴はなし、言われた側はいい気分にはなりません。もうひとつは「他人の悪口(or 噂話)で盛り上がらない」。人の噂話とか、近所とか職場とか…… ネガティブトークはしない。

編集部:そのルールはいつぐらいに決まったんでしょうか?

中山:結婚して間もなくですね。グチや悪口って自然と出てしまうものなので、ルールとして決めて、意識して潰していきました。夫婦で共通の嫌いな人の話をすると、楽しい時もあるんですけど、得るものがないな…… と。あと、子供には「くだらないことを話す親なんだな」って思われたくないですし。

編集部:事前に決めているのがいいですね。

中山:それでも出てくることもあるんですけどね。でもルールがあるから、「おっと、そこでやめよう」となります。

編集部:夫婦でも「エクストリームコミュニケーション」という形でテーマを決めて話す連載をされていましたよね。

中山:「宝くじで1億円が当たったらどうする?」「子どもが性同一性障害を告白したら?」という架空の話について対談するんですけどね。こう言うエクストリームな話を連載のコンテンツとして企画して…… 完全にプライバシーの切り売りです(笑) 体張って作るのが信条なので。

話した後に、妻には「あんたのことよくわかったわ」と言われました。夫婦でも意外に伝わってなかったんだな、と。

編集部:子育てに必死になっていると夫婦の会話ってなくなりがちですから、ゲーム感覚でテーマを決めて話すといいかもしれませんね。結婚前のカップルにもいいかも。

中山:「移住するなら」、「起業するなら」、「大災害が起きたら」…… とか。真剣に話すとすごく面白いんです。お互いが大事にしていることが、価値観がめちゃめちゃわかるんですよ。

編集部:話はもどって、今週末の娘さんとの話ですが、進路について話すのは初めてですか?

中山:連載の中でも勉学とか進路とかはうっすらしているのですが、彼女の中でそこからステージアップしたんでしょうね。大学をそろそろ意識し始め、より具体的に考えているんだと思います。人生の岐路が来たら父と話す、みたいな感じでしょうか。

編集部:目先の話じゃなくて、長い目で見てもらえるのがお父さんならではですよね。とにかく今週末が気になりますね…… また教えてください!

中山さん流 子どもとの会話の引き出し方5か条

・相手の興味から会話の糸口を探る

・言いたいことは著名人の言葉や著書の力を借りる

・「聞く:話す=8:2」で引き出すように対話をリードする

・説教はぐっとこらえる

・相手の想像を超える返答をする

「キモいお父さん」の勝手なイメージだと、熱く若干ねっとりしたタイプかなぁと思いきや、面白いことも、良いことも、真理をついていることも、淡々とお話されていたので、こちらもすんなり素直に受け取ることができました。娘さんもそういう感じなんだろうな、と。それに「説教はしない」「常識は言わない」「相手の考えを引き出す」これらのルールは、かなり自分を律して我慢強くないと徹底できませんし、相手が良い気分で話すための「会話のリードをとる」のも細やかな気遣いがなければできません。思春期の子に対するコミュニケーションだけでなく、夫婦間でも仕事場でも活用できる目から鱗の対話術がたくさんありました!まずは夫婦間でエクストリームトークから始めたいと思います。

中山 順司さんプロフィール
1989年、高校卒業と同時にアイオワ州の全寮制高校に入学。唯一の日本人の中英語を学びGeorgia州の大学に入学。世界各国の留学生らと共同生活を送りつつ、心理学・生物学・社会学を専攻し1994年に卒業。その後、日本で某有名携帯会社に新卒入社しマーケティングと営業に携わる。2000年にネット業界に転身し、旅行会社のコンテンツビジネスを立ち上げ、その後個人ブログがきっかけでブログソフトウェアベンダーのシックス・アパートに入社。この「父と娘とマジトーク」はBusiness Media誠で連載され、書籍化され話題に。現在、freee株式会社 経営ハッカー編集長。
HP:freee株式会社 経営ハッカー

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文・インタビュー:インタビュー(宮﨑晴美)、文(飯田りえ)

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