キャリアママでなくても働き続けたい! ブランクありのママが子連れ出勤で感じた「働き続けること」の意味

ラシク・インタビューvol.44

ソウ・エクスペリエンス株式会社 / ライター 望月 町子さん

都心部ではフルタイムで働いていても、保育園に入れない!という状況が長く続いています。仕事がある人でも保育園に入れないという現在の状況は、「一度仕事を辞めてしまったけれどまた働きたい」と願うママ層にとって、さらに大きなハードルです。その1つの解決策となりうるのが、最近話題となっている「子連れ出勤」。今回は、子連れ出勤を推進するソウ・エクスペリエンス株式会社でパートタイムスタッフとして働く望月町子さんに、子連れ出勤によって得られたことや可能性について伺いました。

子どもと一緒にいるのに「孤独感」を感じる日々
産後うつを経て、働きたい!と強く思った

望月さんと娘さん

望月さんと娘さん

ラシク編集長 宮﨑(以下、宮﨑):子連れ出勤をすることになった経緯をまずお聞かせ頂けますか?

望月さん(以下、敬称略 望月):妊娠する前は、あるカフェチェーンでマーケティングの仕事をしていて、出産後も働くつもりだったのですが、妊娠2ヶ月の時に流産の兆候が出たのです。万が一のことがあったら困ると、すぐに上司に話して引き継ぎをし、退職することにしました。無事、妊娠が継続でき、出産をした後しばらくすると、今度は産後うつになってしまったのです。産後うつのチェック項目に全て当てはまるような状況で、「これは産後うつ」と自分でもすぐに分かりました。その頃、子どもとずっと一緒にいるのに孤独感を感じていました。そして「外で働きたい!」と強く思ったのです。私の住んでいるエリアは待機児童がかなり多い地域で、これから仕事を探す私のような人が子どもの預け場所を見つけるのはかなり難しい状況です。それでも「働きたい」ということをいろんな人に言うようにしていました。そんな時知人が紹介してくれたのが、子連れ出勤をしているソウ・エクスペリエンスという会社だったのです。

孤独を感じた望月さんが自然と見出だした方向が「働くこと」だったわけですね。

望月:出産前は長期的な視野でじっくり考えることを仕事にしていたので、子育てという短期的な作業が続いていく生活がストレスになったという側面もあります。昔の生活を取り戻したいなと思ったこと、そして人とコミュニケーションを取ることも気分転換になると思いました。

ネイルやエステなど「楽しむ」アクティビティに向かうという選択肢も一般的にはあるのかもしれませんが、私にとっては、収入がないのに娯楽にお金を使うこということに抵抗がありました。自分がお金を稼いで、好きなようにしたいという想いもありました。

個人も会社も試行錯誤でスタートした子連れ出勤
辞めようと思ったことは一度もない

子連れ出勤の一コマ

子連れ出勤の一コマ

宮﨑:そうして面接を経て、子どもが1歳8ヶ月の時から子連れ出勤をスタートするわけですね。

望月:子連れ出勤を許してくれる会社ってどんな会社なのだろう?という思いを持ちながら面接に行ったのですが、とても楽しそうな雰囲気で「ここなら子どもがいてもいいのかもしれない」と思いました。そして、チャレンジしてみたい!と思ったのです。

実際に子連れ出勤をしてみて、どうでした?

望月:やはり家とは同じようにいかないので、最初はイライラしたり、周りの人に気を使って精神的に難しい時期もありました。子どもも成長していくので、ペースがつかめたなと思ったら、また別の問題がやってくる…という感じです。最初は週3〜4日、10時〜4時までの勤務だったのですが、週2回ほどにペースを減らしたこともあります。ただ、辞めようと思ったことは一度もありません。常に「続けるためにどうするか」を考えていました。現在は、子どもが幼稚園に通うようになったため、週4日の10時〜13時で仕事をし、それから子どものお迎えに行っています。また、在宅での仕事も受けています。

子連れ出勤は、一緒に働く人がどう思うか?ということも大切だと思うのですが、その辺りはどうでした?

望月:10人いたら、思うことはみんな違うとは思いますが「慣れた」と皆さんおっしゃってくれていますね。試行錯誤を経て、子連れ出勤は1日2人までとか、幼稚園という選択肢が出てくる3歳で卒業という風にルールを作るようになってきています。電話の際に、子どもの声がすることを気にする人もいたようですが、ある時、会社として一斉に「子連れ出勤が可能なオフィスなので、子どもの声がうるさいこともあるかもしれませんがご了承ください」というメールを送ったそうで、それからは先方の会社の方にもご理解頂くことが多いようです。

子連れ出勤をはじめてから、子連れ出勤に関するブログをはじめていらっしゃいますよね。それはどんな理由からなのでしょうか?

望月:子連れ出勤をして6ヶ月後にブログを書き始めているのですが、それにはいくつか理由があります。1つは社会的な理由で、子連れ出勤というスタイルはこれから増えていくと思ったので、自分の経験が誰かのヒントになるとうれしいなと思ったのです。「子連れ出勤」について他に書いている人がいなかったので、それなら自分が書くしかないと。子どもの成長によって、子連れ出勤で大変なことや状況は変わっていくのですが、その変化を書くことにも意義があると思ったのです。

もう1つは、自分のためです。産後うつになったと言いましたが、その影響で文章が書けなくなっていました。その頃、400文字を書くのに3時間かかるくらいで。自分が感じていた異変を解消するために、文章を書くことがいいのでは?と思ったのです。

最後の理由は娘のため。これだけたくさんの大人に大事にしてもらったという記録を残したかったのです。娘が大きくなった時に、振り返ることができたらいいなと思いました。

時給から、みなしお世話時間を引いてもらう理由

宮﨑:そうして綴ったブログの中で、「時給からみなしお世話時間を引いてもらう」という記事がかなり注目を集めたそうですね。

望月:「みなしお世話時間分を、時給から引いてもらう」のは、自分から望んだことなんです。どうしてもオムツ替えやおっぱいをあげるお世話の時間が多く、他の人より働いていない時間が、5分・10分と積み重なっていくのが申し訳なかった。そんな時「時給から、みなしのお世話時間分を引いて欲しいよね」と話しをしていたのが、会社の人に伝わったんです。会社としては、子どもがいる前提で雇っているので、みなしお世話時間分を引くということに反対の声が多かったそうです。でも、「それで気持ちが軽くなるなら、引こうか」ということになりました。ルールとしては、時給からみなしお世話時間を引いていいのは2割までということになっています。

「時給からみなしお世話時間」を引くことで、気持ち的にはどう変わりました?

望月:今まではお世話をする時に、「はやくオムツ履いて!」「早く飲んで!」という感情があり、それは娘のためにも良くないなと思っていました。みなしお世話時間を引いてもらうことで、「今はオムツの時間」「授乳の時間」と思うことができ、怒ることが減ったんですね。すごく割り切れて、気持ち的にかなり変わりました。

一方で、記事に対していろんな意見があったことで思ったことは?

望月:多かったのは「弱い立場の人のお給料を引くのは悪しき前例だ…」「自分から引かなくてもいいのに…」という意見で、「子連れ出勤」そのものを否定するというより「時給」に関する反応でした。この反応を受けて、子連れ出勤自体は認めている人が多いんだという社会的機運を感じましたね。

また議論を巻き起こしたことで、子連れ出勤を知らなかった人も知る機会が生まれたことも良かったのではと思っています。

ソウ・エクスペリエンスさんの他にも、MAMA pickなどでライターとして活動されていますね。

望月:以前、シブヤ大学で子連れ出勤に関する授業をやったことがあったのですが、授業を経て、子連れ出勤についてはコラムなどで書いていくのもありなのかなあと思ったのです。そこで応募してみたところ、採用して頂いたんですね。

出産前は正社員でフルタイムという働き方が普通だと思っていたのですが、子どもを産んでからは仕事の窓口をいくつか持っているというようなスタイルがいいのでは?と思っています。小回りの効く仕事をいくつかもらえたことは、ラッキーだったとしか言いようながないですね。

子連れ出勤をしたいなあと思っている人、受け入れる会社側に伝えたいことは?

望月:子連れ出勤をしたいと思うなら、やった方がいいです。会社にとっても新しい試みだと思うので、わがままで受け入れてもらっていると思わず、意見を会社に伝えていくといいと思います。また、受け入れる会社側も、受け入れた時点で終わりではなく、会社の成長に合わせながら、臨機応変に、その時にできる改善をその都度していくつもりで取り組んでもらいたいなと思います。

娘さんは一緒に会社に行くことをどう思っていますか?

望月:娘は会社が大好きなので、幼稚園に行くようになって、会社に行かなくなった今、「会社に行きたい」と言っています。会社になかなかいく機会がないので、ソウ・エクスペリエンスの子連れ出勤の様子が紹介されたテレビの番組の録画をよく見ていますね(笑)。周りにたくさんの大人がいるという環境が、すごく楽しかったようです。

今思えば「子どもが落ち着いたら復職する」は机上の空論だった
子連れ出勤によって生まれた、働き続けるチャンス

シブヤ大学で「子連れ出勤」に関する授業の様子

シブヤ大学で「子連れ出勤」に関する授業の様子

宮﨑:望月さんにとって、子連れ出勤によってもたらされたものはなんですか?

望月:今はまだ渦中にあるので、実感しにくいところもありますが、大きなターニングポイントではあると思います。仕事を辞めた頃には、「子どもが落ち着いた頃、復職しよう」と思っていたのですが、それは机上の空論だったなあと。子連れ出勤というスタイルがなければ、働けない期間はもっともっと積み重なっていたし、育児コラムなどを書かせてもらえるチャンスも巡って来なかっただろうと思うのです。おそらく、子連れ出勤がなければ、40歳くらいになった時に、自分の人生もっと働きたかったなあと思っていたのではないかと

私は、もともとキャリア思考ではなかったので「女性活躍推進法」とか、「キャリアキャリア」と言われると少し違うなあと思うのです。仕事も家庭も育児も、そこそこにやりたい。キラキラママと言われると眩しすぎるところがあります。でも働くことを続けられることが何よりよかった。だからこそ、これからも働き続けていきたいと思います。

子連れ出勤をスタートするには、個人も会社も試行錯誤を繰り返すと思います。でも、子連れ出勤とそうでない働き方を比べるのは、あまり意味がないと思うことがあります。子連れ出勤をしたい理由や、せざるを得ない現実もある。そして、子どもがいない人が子どもとの生活に触れられるというメリットもあるかもしれません。そして子連れ出勤がなければ、働けなくてつらい想いをする人も多くいるのです。女性活躍推進が本来しなくてはいけないことは「働きたい人が働ける社会を作ること」なのではないでしょうか。

ソウ・エクスペリエンス株式会社 / ライター 望月 町子さんプロフィール
1983年生まれ。2014年夏、娘1歳8ヶ月のときから、ソウ・エクスペリエンス株式会社で「子連れ出勤」スタート。MAMA Picksでもコラム執筆中。
HP:ブログMAMA picksコラム

ワーママを、楽しく。LAXIC

文・インタビュー:宮﨑 晴美

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