【Lifull FaM代表 秋庭さん×ファザーリングジャパン理事西村さん】 働き方や子育てはもっと多様でいい! 20代で子どもを持ち、キャリアと子育てを並行して築いていくスタイル

ラシク・インタビューvol.37

Lifull FaM 代表取締役 秋庭 麻衣さん

非営利活動法人ファザーリングジャパン理事、株式会社HARES 代表取締役社長 西村 創一朗さん

「結婚や子どもを持つということは、社会に出てある程度のキャリアと収入を得られるようになってからでないと...」。漠然とこんなふうに考えて、結婚や子どもを持つことを躊躇している人が男女ともに結構多いのではないか。
でも、本当にそうなんだろうか? 選択肢は色々あるのではないか。
LAXIC編集長・宮﨑晴美のそんな疑問から、今回の対談が実現しました。
新卒1年目で妊娠し、後に子会社社長になった秋庭麻衣さん。19歳でパパになり、今年2月に第3子が誕生、会社員・経営者・NPO理事、そして夫・パパと、いくつもの顔を持つ西村創一朗さん。
お2人に、子育てとキャリアの構築に若いころから並行して取り組んでいくスタイルについて、お話を伺いました。

後からジワジワ生きてくる
子育てとキャリアを同時並行するメリット

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左)西村さん 右)秋庭さん

ラシク編集長・宮﨑(以下・宮﨑)子どもを持つということに対して、「男性がちゃんと稼いでからじゃないと」という考え方もまだまだ多いように感じるんです。でも、夫婦で協力して稼ぎ、キャリアも積んでいくという形もありなんじゃないかと。
その辺をお2人のご経験も踏まえながらお伺いしたいと思っています。
まず、お2人とも早めにお子さんに恵まれたということで、実際に、子育てとキャリアを同時並行させていることのメリットをどう感じますか?

秋庭さん(以下・敬称略)一番は、ちょうど役職に就くポジションになったころに子育てもひと段落ついてくるので、自分のキャリアと子どもの成長が重なっているということですかね。
30過ぎて産むような場合、ある程度役職に就いている方が育休を取って、例えば1年間抜けるというのは、本人もなかなか悩ましい。組織上の問題としても悩ましい。
若いうちに出産すると、大変な面はもちろんすごくあるのですが、ある程度のポジションに就いた時に仕事に重きを置けるようになっていますからね。

西村さん(以下・敬称略)僕はまだそのメリットを享受する年齢ではないと思うんですが、同じことを確信をもって感じています。
僕、長男が成人する時って、まだ39歳なんです。ビジネスパーソンとして脂が乗っている時期に子育てのほとんどを終えている。長男がハタチで、次男も17歳で、一番下の長女もその頃には小学校6年生。
自分のやりたいことや、夫婦でやりたいことなどに僕も妻も専念できるので、「人生2回生きられる!」というような感じがしますね。
子どもができて学生結婚し、大変な思いをして色々な人に迷惑もかけたけれども、結果的においしいなと。かといって、さすがに学生結婚した方がいいとは、あまりにも無責任なので言いません(笑)。
あと、非常に注目を浴びやすく、ひとに覚えてもらいやすいというのは、ものすごく大きいですね。
秋庭さんが出産されたのって何歳でしたっけ?

秋庭25歳です。

西村この業界でいうと25歳で出産したっていうのは、ダントツ若かったと思うんですよね。

秋庭出産するときに、今まで思い描いていたキャリアと全く違うキャリアになることに対して、正直すごく悩みました。
でも、逆にそれを差別化ポイントとしてポジショニングしていけばいいじゃないかって。

西村僕も最初すごく悩みました。若いうちはがむしゃらに働いてなんぼだし、そこに家族っていう制約があるのは損失なんじゃないかとか、子どもがいることが就活にデメリットになるんじゃないかとか。
でも、悩んでいても状況は変えられないからポジティブに使っていこうと。
ファザーリングジャパンに出会ってスイッチが切り替わりました
ね。

秋庭それを自分の持ち味とし、誇りに思って堂々と出していきたいですね。

西村それを「いいじゃん!」って言ってくれる会社の方が、むしろいいですよね。

秋庭そういう会社の方が、長く働き続けられますものね。あと、子育ては、若い方が体力的にもいいなって(笑)。

西村運動会に行くと保護者競技でヒーローですからね(笑)。
行事で学校に行っても、僕の周りに子どもたちが集まってきて、一緒にコマ回したりサッカーしたり。若いからっていうわけじゃないと思うんですけど、身近なのかもしれません、子どもたちにとって。

秋庭感覚が近いんでしょうね。あと、子育てと仕事を両立していくって、やっぱりどうしても体力が要るし、プラス、キャリアの上で何かチャレンジしていくってなると、さらに体力が必要になってくる。
そういう意味でも若いうちの出産でよかったかな、とは思いますね。

西村若いうちの子育てを、僕は「矯正ギプス」って呼んでいるんです。巨人の星に出てくるみたいな。
他の人たちが、時間の際限なく働いて成果を出しているという状況に対して、同じかそれ以上の成果を限られた時間の中で出せたら、最強。絶対に筋肉付きますよね。
その「ギプス」を解きはらった瞬間ってすごいことになるんじゃないかと。

1分1秒たりとも無駄にできない
時間の使い方にシビアになった

int37_2宮﨑若くして子育てを経験したことで、同級生や同期とかと、時間の使い方が違うなと感じる点はありますか?

西村明確に違うと思います。時間に対するこだわりが違います。1分1秒無駄にしないぐらいに。

秋庭私も全く違いますね。まだまだ、夜中まで働いたり帰宅時間が遅くなることを自慢するような文化が残っていて。
そういうところは全く感覚が違いますね。「それって自慢になるの?」と。

時間的制約というものを考えた場合、管理職と子育ての両立って、いつぐらいからできる感じですか?

秋庭私が実際に管理職と子育て両立したのは、娘が小2の時。本当に時間的制約がなくなったなあと思えたのは小4ぐらいからですかね。
4年生になると平日の夜に塾などに行くようになり、その時間を仕事に充てられるようになってだいぶ変わりましたね。
2~3年生のころはまだ学童クラブに通っていて午後6時には終わってしまうので、管理職をやっているけど家には他の社員より早く帰っていました。

その気遣い、本当に相手のためになっている?
仕事の渡し方で、子育てなどで制約の多い社員もグンと育つ

int37_3宮﨑子育てとキャリアを20代で積んでいく時に、自分自身に必要なこと、会社側に考えてもらいたいなと思うことはなんでしょう?

秋庭私の場合は、上司の育て方がすごく上手だったんじゃないかなと思っています。

短い時間で成果を出せる仕事を渡されて、成果を出したものに対してきちんとと評価されてきたので、時短でもキャリアアップできたんです。

時短だと逆に気を遣われて、「これぐらい少ない方がいいよね」と、ルーティーンの仕事を渡されてしまうことが多いと思うんですが、うちの上司の場合は、ルーティーンは穴が開く可能性があるので渡さず、逆にチャレンジ業務を与えてくれました。

1日風邪で休んだだからダメになるわけではなく、成し遂げたときの達成感や社内からの評価は大きい仕事でした。

自分からも、「こういう働き方がしていきたい」とか、「こういう仕事にチャレンジしていきたい」ということを、きちんと伝えることが大事ですね。

西村僕は、そういう意味で気を遣われているっていうのは全くないですけど、比較的忙しい職場にいて。みんなが遅くまで働いている中で、僕は早めの時間に帰ることも少なくありません。
その場合は、なぜ帰るのか、帰る代わりにこれはちゃんとやるとか、自宅でできることは帰ってから自宅でやるとか、穴が開いたときには厭わず残って埋めるなどといったことを、ちゃんと対話をすることにすごく気をつけています。
今はソーシャルネットワークというコミュニケーションツールもありますが、そこで自己開示をするだけでなく、リアルなコミュニケーションを大事にすることに注意しています。

コミュニケーション、マネジメント能力…
仕事と育児はお互いを高め合う

宮﨑若いうちからキャリアと育児を両立させてきて、子育てがキャリアのプラスになると感じますか?

秋庭コミュニケーション能力はやっぱり付くのかなと。
2~3歳のイヤイヤ期なんて、普通に言って通じない人たちに話をしていくので(笑)。
そこでわかりやすく説明するようなコミュニケーション能力が必要ですよね。
仕事で勉強したことが子育てに生きている場合もあります。仕事が人事だったっていうのもあって、動機づけの勉強などは結構するので、それを子育てにも生かせました。

西村僕はいわゆるリーダー経験、マネジメント経験はありませんが、「マネジメント」ってシンプルにいって「人を動かす」ことだと思っています。
人を動かすっていう観点で言うと、子どもも大人もあんまり変わらないというか、子どもの方がよっぽど動かすのは難しいんですよね。
僕が子育てで感じたことは、ある意味、「あきらめ」。人の心や行動って、そんなに簡単に変えられない。
だから、どうやったらこの人が自然に自分で意図する方向に動いてくれるかと。
相手ではなく自分を変える
しかないんですよね。
そんなことを、ぞれぞれ個性が違う子どもたちに伴走してくる中で思ったんです。
子育てとマネジメントっていうのはオーバーラップしていて、OFF-JT(職場外訓練)で学んで、育児で実践して仕事で生かすという感じです。

西村さんは、元々「3人子どもほしいなあ」って気持ちはあったんですか?

西村ありました。僕も奥さんも3人兄弟なので、3人いるのが普通だったというか。

安定収入はこれから築いていくもの
子どもを産むマストの要件ではない

秋庭若いうちに子ども産みたいと、高校生、大学生ぐらいの頃には思っていても、いざ社会人になると色々考えて躊躇しちゃう人もいるかもしれませんね。
周りに若いうちに子どもを産んでちゃんとキャリアアップしていって幸せに家庭を築いているというような人が多分いないから、全くイメージがつかない。
さらに、子育てと仕事の両立は大変だよというたくさんの情報が入ってくるから。

西村20代前半までの妊娠・結婚は、いわゆる「できちゃった婚」のイメージに引っ張られすぎていて、早く産むことは悪いことだというような印象がありますよね。
僕は授かり婚ではありましたが、意思を持って早く産むということは、大事だと思うんです。
人生において大事なことは先送りしない。
お金の話で言っても、年収300万円ずつ夫婦で稼いで600万円あれば、普通の暮らしはできます。
夫が600万稼いで妻が専業主婦っていうよりも、税金的なことを考えてもいい暮らしができるはず。そう考えたら、何を臆することがあろうか
と。

秋庭私もその時新卒1年目だったのでお金のことも考えたんですが、もう立派に社会人として働いている自分たちが産めなかったら、一体だれが産めるんだろう、と思いました。

もし若くして産んで、「僕たちは300万・300万でいこう」というふうにお互いが同意できるなら、お互いのキャリアを尊重できるという点もありますよね。
夫婦関係も育児の協力面でも、うまくいく可能性が高くなるかもしれないなと。

西村その点で言うと、我が家はちょっと特殊で。学生結婚したタイミングで、奥さんが自分の意思で大学を辞めているんです。
「ただでさえ親のすねをかじることになるのに、学費まで払わせられない」と。
彼女の中で今、一番大事なのは家族だと言ってくれています。
もちろん家計のために、3人目が2月に産まれる前も11月まで働いていましたが、収入で言ったら彼女が2:僕が8ぐらい。
ただこの状況は「今」という「点」の話であって、これからずっとではありません。
今は、彼女が家庭を優先にして、時間と場所に縛られずに自分のやりたいことやり、スキルを磨く期間だととらえています。

「がむしゃらに働く」ってどういうこと?
仕事を産まない理由にするのは残念

int37_4宮﨑産みたいときに産むためには、男性の働き方の改革も必要ですね。

西村必要不可欠、マストだと思いますね。

働き方の改革について言うと、今子育てをして時間的制限がある人の中でも「若いうちはがむしゃらに働いた方がいい」と言う人が割といますよね。

秋庭「20代がむしゃら説」みたいのはよく聞く話ですよね。

西村行動経済学でいう生存者バイアスですよね。
今、管理職、指導的立場にある人っていうのが、高度成長期のモーレツ社員、24時間戦えますか世代、もしくはそういう人たちに指導を受けた人たち。
だからこそ「自分はそうやってきた。ゆえにお前もそうすべきだ」というような帰納法的な指導をしているんですけど、本当にそうでしょうか。
「がむしゃら」の尺度を何に置くかなんですけど、定量的な観点でいうと、僕は全然がむしゃらじゃないです。
飲み会以外で終電を逃したこともないし、土日出勤も数えるぐらい。
でも客観的に見て、だからダメだということはない。
実際に活躍している先輩を見ると、一番売れている営業マンは一番早く帰っていたんですよね。
彼は、「がむしゃらな時期もあったけど、その時は単に非生産的だっただけだ。がむしゃらに働かなくても、それが非生産的だということに気づくことはできる」と。
時間をいとわずがむしゃらに働くことは骨太なキャリアを形成するうえで不可欠なことではないんです。

秋庭「がむしゃら=長時間」という意味だったら私も全くできていないですね。
でも、ものすごく密度濃く、集中して働くという意味だったら、かなりがむしゃらにやってきたって思います。
子育てで20代にすごく制限があって、その中で密度濃くやってきたことが、30歳を越えて挑戦するための土台になっていると。20代に集中して仕事をきちんとやるってことは大事。
それはイコール長時間ではない
んですね。

仕事に縛られずに産みたいと思った時に産める社会がいいですよね。

秋庭何歳で産むのが正解というのはないですからね。
体力的なことや身体的なことはありますが。
「若いうちに産む」という選択肢がないと頭から思ってしまっている人たちが多いので、「それもあるんだよ」ってところが広がればいいなあと思います。

西村遅く産むのだって悪いことじゃないですが、仕事を理由にするのはもったいないですよね。
パートナーと2人きりの時間をあと何年過ごしたいなんていう理由は素敵だと思いますけど。
仕事に差し支えるだとか、キャリアに支障が出るだとかは、すごくもったいないと思います。

秋庭仕事を理由にすると、完璧なタイミングなんてないですよね。

西村若くして仕事を産むとチャレンジできないと思っている人も多い。
でも、家族がいることを理由にチャレンジしない人は、独身でもチャレンジしないと思っています。
僕も家族がいますけど起業していますし。そういう起業家は世の中にたくさんいる。
自分という人間の持つ時間が限られている中で、やりたいことにふたをしている時間はないと思うんです。
やりたいことをあきらめるか、収入をあきらめて転職するかの二択しかないような世の中はすごく不健全。ライフもワークも、やりたいことに忠実になったらいいんじゃないかな。

秋庭いろんなことやっている自分が、総合的にパワーアップしていると思うんですよね。

西村金融資産が100あれば、分散投資は当たり前。人生も全く同じ。
1つのこと、1つの会社で、仕事「だけ」と人生は、ものすごいリスクなんですよね。
自分という資産をどう運用していくのかという視点です。

秋庭子育てに限らず、人生は今後何があるかわからない。
自分のポジションというものをしっかりとらえて、そこから切り拓いていくことができる人というのは、どんな状況になってもやっていけますよね。

10代の終わりにパパになった西村さん。新卒1年目で妊娠・出産を経験した秋庭さん。置かれた状況をポジティブにとらえることで、おふたりの人生がどんどん発展し、深まっていく様子が伺えました。お話から強く伝わってきたのは、色々な形の働き方や子育てがもっとあっていいのではないかということ。その1つとして、お2人が実践されてきた「若いうちに子どもを産んで、子育てとキャリアを並行して築いていくような形」があり、今回の対談が、若い方たちの発想を広げるきっかけになってくれるといいなと思います。

秋庭 麻衣さんプロフィール
株式会社ネクストに新卒で入社し、不動産・住宅情報サイト『HOME'S』の営業を経験。
社内第1号となる産休・育休を取得するが、育児をしながら働くには会社のサポート体制が不足していると感じ、経営陣に自ら新たな施策を提案し、社内制度を立案。
育休から復帰後は、時短勤務を続けながら人事部で新卒採用や人材育成を担当し、管理職としてメンバーのマネジメントを経験。
仕事と子育ての両立で直面する問題を解決したい、という強い想いから2014年10月にネクストから100%出資を受けて「株式会社Lifull FaM」を設立。社長としてサービスの立ち上げを行う。1児の母。
HP:Lifull FaM
西村 創一朗さんプロフィール
1988年生まれの27歳。小学校2年生の長男と4歳の次男、0歳の長女の三児の父。大手人材総合会社で採用担当・新規事業企画を兼務する傍ら「父親であることを楽しもう」をモットーに活動するNPO法人ファザーリングジャパンにて最年少理事を務める。大学一年時に高校生の頃から付き合っていた彼女と結婚し、19歳で父親になる。プライベートブログ「Now or Never」は月間30万PVを超える。ニュースキュレーションアプリNewsPicksでも精力的に発信を続け、フォロワーは45,000人を超える。
HP:Now or NeverNews Picks

ワーママを、楽しく。LAXIC

文・インタビュー:宮﨑 晴美(インタビュー)・千葉美奈子(文)

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