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2015.07.30 2023/05/31

子どもと程よい距離感で、仕事に打ち込む ワーママと社会を変える“新しい働き方”

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子どもと程よい距離感で、仕事に打ち込む ワーママと社会を変える“新しい働き方”

今回のラシク・インタビューは、ママを助ける保育サービス付きのシェアオフィス「マフィス馬事公苑」を立ち上げたオクシイ株式会社の高田麻衣子さん。子どもを預けてフルタイムで働いていた時に東日本大震災が起こり、「子どもに何かあったとき、すぐ何かできる距離感」で働く環境を作りたい!とマフィスのアイデアがふと浮かんだそうです。

今回のインタビューで、企業も社会も少しずつ変わってきているんだなあと実感した一言がありました。マフィスをテレワークの場としてお子様を預けながら利用されている会員さんのほとんどは、その費用を企業側が支払っているというのです!(そんな企業を応援したい!)。今回は、ママの働き方と社会を変えるきっかけを生み出した高田さんに、ビジネス立ち上げのきっかけや自身のワーママ生活について伺いました。

「子どもの近くで働く」アイデアは東日本大震災がきっかけ

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宮崎まずマフィスを立ち上げる前のお仕事と、マフィス立ち上げのきっかけを教えて下さい

 

高田麻衣子さん(以下、敬称略。高田)マフィス立ち上げの前は15年ほど、不動産関係の仕事をしていました。最後の会社に10年ほどいたのですが、女性初の管理職で、初の育休取得者なのです。出産前は経営企画部で、広報とIRを担当していました。ちょうど会社がジャスダックから東証2部に鞍替えを目指し急成長していた時期だったので、1人目の妊娠中は深夜まで仕事をする時期もあり、かなり忙しく働いていました。1人目は1年の育休を取得し、復帰にあたり残業時の対策などいろいろ考えていた時、営業部門のバックオフィスに異動することが決まったんです。フルタイムで部下もいる同条件での異動でした。元々しくみを作っていくのが好きで、営業部門でも課題解決を次々と提案していったのですが、だんだん課題がなくなっていくんですよね。少し物足りなく感じはじめた頃、2人目を妊娠しました。最初の育休後の職場復帰の際に部署異動があったので、もう異動が嫌だと思っていまして、2人目は3ヶ月で職場復帰したのです。

 

その直後に起きたのが、東日本大震災でした。その日はもう必死で歩いて子ども達を迎えに行ったのですが、その後も余震がかなり続きましたよね。そんな中、原発の問題があるから「子どもたちを連れてどこかに逃げた方がいい!」と多くの人に言われたのです。実際は、もう職場復帰しているので逃げられないのですが、もし育休を普通に1年間取っていれば実家に行って様子をみることもできたのですよね。その時、元々の立場にしがみついて無理に復帰したことをすごく後悔したのです。大切にするものの順番が違うなと。その時に「子ども達に何かがあったときにすぐに何かできる距離感」で何かできないかと思い、事業所内保育所を住宅地に作りたいという考えがふと浮かんだんです。そこから2年半くらい構想を練り、ビジネスプランを何度も作り直しました。もちろんその間もフルタイムで働いていたんですけどね。

 

不動産業界ということもあり、古い形態が残る社会だったので、子どもがいるけど奥様が専業主婦でという人が社内には多く、育児について十分分からない人が多かったんですよね。分からない人たちの中で吠え続けるよりは別の場所で頑張りたいなと思っていた時に、小1の壁を経験しました。民間学童やシッターさんにお願いしていたので、実は物理的な壁は感じていないんです。でも子どもとのコミュニケーションが不足しているなあとは感じていました。一番心にずっしりと来たのが、家庭訪問の際に先生から「子どもが授業中に寝ている」と言われたこと。その時に、身体の小さい子どもに肉体的負担をかけているなあと思ったんです。同時に「もう飛び出してみてもいいのでは」と思いました。それから少しずつ現実的に動き始めた時に、この物件に出会い、一目惚れをしまして決心したんです。そこからはもうかなりのスピードでいろいろ決めて、2014年8月で仕事を辞め、12月にマフィスをオープンしています。

 

さすがのスピード感ですね! オープン前にクラウド・ファンディングをされていますよね。効果はどうでしたか?

 

高田10月くらいにクラウド・ファンディングをし始めたんですよね。資金というよりは、PRの一貫としてはじめたんです。これは、かなり認知を広げるきっかけになって、ここから今会員になった方もいらっしゃいます。

マフィスにはワクワクする才能が集まっている

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ユーザーはどんな方が多いですか? またユーザーからの声は?

 

高田半分はフリーランスの方、半分は企業勤めの方ですね。その企業勤めの方の中でも半分はリモートワークでの利用で、半分は育休中の在宅ワークや勉強したいという層ですね。リモートワークでご利用の方は、最初自分でマフィスの料金を払うつもりで見学にいらっしゃったのが、会社に話してみたら料金を負担してくれることになったという方が多いです。デザイナーさんや翻訳家、食育スペシャリスト、ジャーナリスト、ライターさんさまざまな士業の方もいらっしゃいます。職業は本当にまちまちで、ワクワクする才能が集まっています。エリアは9割方世田谷ですが、川崎市や杉並、渋谷から通われている人もいらっしゃいますね。保育所として登録しているので、保育サービスをご利用のお子様が過ごすエリアとワークスペースは別になっています。もちろん授乳室もありますので、母乳育児を継続しながら働くことが可能です。

 

次のしかけとしてどのようなことを考えていますか?

 

高田本当は仕事したくてうずうずしている人はたくさんいるんですよね。今は働いていないので、子どもは保育園に入れず、幼稚園まで何もできない?とジレンマに感じている人、また都心までは通えないけどキャリアのある女性も多くいます。そういう人たちと企業をマッチングして、オフィスとしてマフィスを使っていって欲しいと思っています。

週末には1週間分の料理をまとめて仕込み!平日の負担を軽減

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では、少しプライベートなお話を聞かせてください。高田さんご自身の今のワークスタイル、一日のスケジュールは?

 

高田日によって違うのですが、マフィスに来る日のスケジュールは下記のような感じです。子ども達との時間を大切にするようにしています。

 

高田さんのある日のスケジュール

4:00 起床
4:00-6:00 デスクワーク
7:00 朝食
7:45 第1子、登校
8:30 第2子、保育園へ
9:30 マフィスに(通勤時間の約40分は読書)
4:30-5:00 マフィスを出る
6:00 帰宅
6:30 食事(週末に1週間分の仕込みをしているので、帰宅して少し調理するとすぐ食事を)
7:00 遊ぶ、勉強
8:00 お風呂
9:00 子どもと共に就寝

 

週末のまとめ仕込み、すごいですね!

 

高田週末、夕方の2時間くらい晩ご飯作って飲みながら、唐揚げや生姜焼きなどの漬け込みをしておいたりするんですよね。お肉に下味をつける類のメニューは一回冷凍すると、お肉が柔らかくなって一石二鳥なんです。またお出汁だけでもまとめてとっておくと、お味噌汁やスープはすぐ作れますし、親子丼などの丼ものもすぐ作り始めることができます。また、ハンバーグなどひき肉系は冷凍するとおいしくないので、仕込みをしておいて月曜日のメニューになることが多いですね。煮物やシチュー・カレーなどは作って冷蔵庫に入れるようにしています。

 

起業する前と後で、働き方は変わりましたか?

 

高田24時間を全部自分でコントロールできるので、前はシッターさんにお願いをしていたことを考えると楽になったとは思います。が、悩みは多いので、仕事のことが頭からは離れません…… また土日も仕事があるので、そういう時はパートナーに子供たちのことを任せることも多いですね。ただ行事は優先できますし、誰かに気を使わなくていいのは気分的には楽ですね。

 

育児と仕事を両立する上で、一番大切にしていることは?

 

高田なるべく子ども達との生活を大事にするように、健全に育てるようにしていますね。あとは、旦那さんに感謝すること。月並みなんですが、いないと回らないので。

 

もともと旦那さんは何でもできる方なんですか?

 

高田全般的に何でもできる人で、本当にありがたいなあと思っています。一度、仕事も家庭も全部1人で抱えてしまったことがあったんですが、「自分だけではできないもの」という認識を持つことも大切だなあと思って。実は、ここ5年くらいトイレットペーパーや洗剤を私が買ったことがないのです。そういう日常の気付かないことを常にやってくれてるのがありがたいですね。それでも沢山悩んだりはしていますが、協力体制は常にあって、自由にやらせてもらっています。

 

働きながら育児をしていて、うれしかったことは?

 

高田私、子どもたちの絵が好きなんです。上の子は風景画をよく書いているのですが、色使いがすごくきれいで。下の子はもっぱらママと自分を書いてくれるのですが、常に笑顔を描いてくれるんですね。忙しくて悩むことも多いのですが、伸び伸びとした優しい絵を描いてくれる間は大丈夫かなと思っています。

 

自分の中での毎日のルールは?

 

高田スキンケアを怠らないようにしています。肌の調子が悪いと、外側へのエネルギーが落ちるんですよ。エネルギーのある人に人は惹き付けられるじゃないですか。「一緒に仕事をしたい」と思ってもらえるために、身だしなみにはかなり気をつけていますね。

 

子どもに対してやりたい「夢」を教えて下さい

 

高田特にお兄ちゃんは男の子なのでお金の仕組みを学んでほしいと思っています。例えばバイクが欲しいからまとまったお金が欲しい、バイトしたいと言われた時に、100万を渡すから30万円増やしなさい、30万増やしたら使って良いよ、と言ってみたいです。時間を売って対価を得るのではなくて、価値を生み出してお金を稼ぐという仕組みを学んで欲しいんですよね。

会社員でも「週1回は自宅勤務を認める」などの幅があると、ワーママ生活はとてもフレキシブルに、楽になりますよね。企業にとって、マフィスのような勤務形態を認めていくことは、潜在しているママの力を大きく活かすきっかけになると思います。LAXICでは、今後も、様々な形で働き続けるワーママたちを応援していきます。

プロフィール

代表取締役 高田麻衣子さん

オクシイ株式会社 代表取締役

1977年生まれ。大阪市立大学卒業後、不動産デベロッパーなど数社で不動産廻りのフロントからバックオフィスまで全般的な業務に従事。プライベートでは1男1女の母。多くの女性に、子育ても仕事も自分らしく欲張りに楽しんでもらいたいとの思いから、2014年に独立し、世田谷区内に保育サービス付きシェアオフィス「Maffice馬事公苑」を開業。

文・インタビュー:宮﨑 晴美

ライター

ラシク 編集部


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